STATEMENT
THE CASTステートメント
作品の面白さと、そこに生まれる人との時間を、言葉にして届けたい。
THE CASTが体験型エンタメを伝える理由と、取材・編集で大切にしている姿勢を記します。
なぜいま、体験型エンタメなのか
すぐに答えが出る時代に、あえて「迷う時間」を残す
知りたいことをAIに尋ねる。長い文章の要約を読む。移動せずに用事を済ませる。便利さや効率のよさは、日々の暮らしを助けてくれます。
私たちは、その便利さを大切にしています。同時に、すぐに答えが出ない時間にも、手放したくない面白さがあると考えています。
答えがわからないまま、仲間と仮説を出し合う。自分とは違う視点に驚く。予想とは違う展開に戸惑い、遠回りをして初めて何かに気づく。
謎の答えを知ることと、自分たちでその答えにたどり着くことは、同じではありません。物語のあらすじを知ることと、その場で選び、迷い、出来事に関わることも違います。
結果だけではなく、参加する過程そのものを楽しむ。 体験型エンタメが持つ、その面白さを伝えていきます。
「考える余地」と「不要な不便」を区別する
会場へ足を運ぶ。誰かと予定を合わせる。すぐには結論の出ない問いに向き合う。
手間や時間はかかります。それでも、その途中で生まれる発見や会話、気持ちの変化にこそ、体験する意味があると考えています。
ただし、不便さそのものを価値として語ることはしません。参加方法がわかりにくいこと、不必要に待たされること、説明が足りずに困ることは、作品の中で考え、迷うこととは別です。
減らしたいのは、参加をためらわせる不要な手間や不安。大切にしたいのは、作品の中で自分なりに考え、感じ、関わる余地です。
人と人のあいだに、物語をつくる
ふたつの「物語」
THE CASTが大切にしている「物語」には、ふたつの意味があります。
ひとつは、作品の中にある物語です。
つくり込まれた空間に足を踏み入れ、登場人物に出会い、自分の観察や判断で出来事に関わる。見届けるだけでなく、その場にいる一人として参加する面白さがあります。
もうひとつは、体験した人たちのあいだに生まれる物語です。
「あのとき、どうしてあっちを選んだの?」
「実はあの瞬間、すごく緊張してたんだよね」
帰り道や、立ち寄った喫茶店で、自然と話が続く。同じ場所にいたのに、見ていたものも、考えていたことも、一人ひとり違う。その違いを知ることで、相手への見方が少し変わることもあります。
作品そのものの面白さを伝えること。そして、そこから生まれる会話や記憶にも目を向けること。私たちは、その両方を大切にします。
一人でじっくり作品に向き合う時間も、誰かと感想を交わす時間も、それぞれに大切にしたい楽しみ方です。
人生の登場人物を、ふやす
大人になると、新しく出会う人も、親しい友人との過ごし方も、いつの間にか決まってくることがあります。
そこに、いつもとは少し違う体験の予定がひとつ加わる。
自分の知らなかった世界をつくるクリエイターを知る。長く付き合ってきた友人の、見たことのない一面に気づく。一緒に過ごした時間が、誰かを思い出すきっかけになる。
「人生の登場人物を、ふやす」とは、単に知り合いの数を増やすことではありません。 自分の世界を広げてくれる表現者に出会うことも、身近な人との関係に新しい奥行きが生まれることも、そのひとつです。
うまく話そうと構えるより、一緒に何かを体験してみる。その時間から、自然な関係が育まれていくことを願っています。
編集の姿勢と約束
初めての人にも伝わる、日常の言葉でひらく
謎解き、イマーシブシアター、マーダーミステリー、ARG(代替現実ゲーム)。ジャンルの名前だけでは、具体的に何をするのかが伝わらないこともあります。
私たちは、作品ごとの特徴を大切にしながら、その面白さを日常の言葉で伝えます。
手がかりを探すのか。登場人物と会話するのか。一人で記録を読み解くのか。参加する人が何をして、どんな時間を過ごすのかを具体的に描き、自分がその場にいる姿を想像できるようにします。
これから参加する人の楽しみを守る
初めて出会う驚きや、ひらめいた瞬間は、先に答えを知ってしまうと同じようには味わえません。
謎の答えや物語の結末だけでなく、仕掛けの存在を明かしてしまう写真や、展開を詳しく書きすぎることにも注意します。公式に公開されている範囲や、取材先と確認した掲載範囲を守ります。
魅力を伝えることと、楽しみを先に明かしてしまうことを区別します。
事実・発言・実感を書き分ける
公式情報などで確認できた事実。取材相手が語った言葉。実際に参加した人が感じたこと。それぞれを区別して伝えます。
主催者の紹介文を、そのまま参加者の感想に置き換えることはしません。参加していない体験を実体験として語ったり、記録にない会話や出来事をつくったりすることもありません。
何が確認された情報で、どこからが一人の参加者の受け止め方なのか。読者が「自分ならどう感じるだろう」と考えられるように書きます。
誇張のない、等身大の言葉で伝える
「絶対に泣ける」「誰でも楽しめる」「人生が変わる」と、体験の価値を一律に保証することはしません。
どんなところに面白さがあり、どんな人に向いていそうか。 その理由がわかるように伝えます。
怖さの有無、会話や演技への参加の度合い、歩く距離や所要時間など、参加前に気になる点も大切な判断材料です。作品の魅力だけでなく、戸惑いやすい点や参加条件も、確認できた範囲で正直に伝えます。
カルチャーとしての記録を残す
限られた期間や場所でしか出会えない体験があります。しかし、公演の終了とともに、記録の役割まで終わるとは考えていません。
なぜ、その形の体験をつくったのか。どんな試行錯誤があり、参加した人に何を残したのか。開催情報だけでは伝わらない背景や考えを、取材や記録を通じて残していきます。
終わった作品を知ることが、つくり手への関心につながる。その関心が、次の作品や挑戦に出会うきっかけになる。そんなアーカイブを育てていきたいと考えています。
体験型エンタメが、映画や演劇、食事のように、人それぞれの暮らしの中で親しまれる文化になること。そのために、作品とつくり手の営みを伝え続けます。
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